脂肪腫は、皮膚の下にできる「脂肪のかたまり」です。
成熟した脂肪細胞が増えてできる良性の腫瘍で、首や背中、肩、腕などに、やわらかいしこりとして触れます。痛みが出ないものが多く、年単位でゆっくり育っていきます。場所も見た目も似ているせいか粉瘤(アテローム)と取り違えられることがよくあるのですが、中身も成り立ちも別のできものです。
放置していいのか。手術がいるのか。そもそも何科にかかればいいのか。外来でよく聞かれるのは、だいたいこのあたりです。見分け方から治療、費用の目安まで、順に扱っていきます。
気になるしこりがあれば、当院までお気軽にご相談ください。
目次
この記事で分かること
- 脂肪腫と粉瘤の見分け方と、受診を考える目安
- 悪性(脂肪肉腫)を疑うサインと、そのときの検査の流れ
- 日帰り手術の方法・費用の目安・術後の過ごし方
脂肪腫(リポーマ)とは?
皮膚の下にできる
良性のできもの
皮膚の下にできる良性腫瘍のひとつで、成熟した脂肪細胞が集まって増えたものです。体のやわらかい組織、いわゆる軟部組織から生じます。命にかかわる性質のものではありません。大きさの幅は広く、数ミリで気づかれるものもあれば、握りこぶしほどに育ってから受診されるものもあります。
どんなできもの?
皮膚の下で脂肪細胞がゆっくり増え、丸い、あるいは平たいかたまりを作ります。多くは薄い膜(被膜)に包まれ、周囲の組織との境目がはっきりしています。
中身は脂肪そのもので、粉瘤のように角化物(垢や皮脂に近い物質)が詰まっているわけではありません。
見た目や触った感じは?
触れたときの感触や見え方には、いくつか手がかりがあります。
| かたさ | やわらかく、押すとぷにっと沈む |
|---|---|
| 動き | 皮膚の上からつまむと、左右にころころ動く |
| 皮膚の色 | 正常な色。赤みや黒い開口部は見られない |
| 痛み | 出にくい(ただし血管脂肪腫では、押すと痛むことがある) |
| 気づき方 | 痛みがないため、偶然しこりに気づくことが多い |


統括医のワンポイント
外来では「やわらかいから大丈夫ですよね」と確認される方が多くいらっしゃいます。やわらかく、よく動くしこりは脂肪腫のことが多いのですが、触った感じだけで言い切れないできものもあります。気になるものがあれば、一度診せていただければと思います。
写真で見る脂肪腫
実際の見え方は、部位や大きさで印象がかなり変わります。症例写真は別のページにまとめていますので、あわせてご覧ください。
脂肪腫にはどんな種類がある?
ひとくちに脂肪腫といっても、いくつかのタイプに分かれます。
| 通常型 | ふつうの脂肪細胞からなる、もっとも多いタイプ |
|---|---|
| 血管脂肪腫 | 脂肪に細かい血管が混じる。多発しやすく、押すと痛むことがある |
| その他 | 線維成分を含むタイプなど |
名前の似た「腎血管筋脂肪腫」は、腎臓にできるまったく別の病気です。読み方や字づらは似ていますが、皮膚にできる脂肪腫とは診療の科も治療も異なります。
手術費用の目安
保険適用と自己負担
摘出手術には健康保険が使えます。
美容目的ではなく、体にできた良性腫瘍を取り除く医療行為にあたるためです。自己負担は、保険証の負担割合(多くの方は3割)に応じた計算になります。金額を左右するのは、手術する部位が「露出部」か「非露出部」か、そして脂肪腫の大きさです。下の表は自己負担額の目安になります。このほかに診察料や処方料、血液などの検査費用、摘出した組織を調べる病理検査の費用が別途かかります。
費用の目安
露出部(顔・首・ひじから先・ひざから先)
| 切除した脂肪腫の直径の合計 | 3割負担 | 1割負担 |
|---|---|---|
| 2cm未満 | 5,000〜6,000円程度 | 2,000円程度 |
| 2cm〜4cm | 11,000〜12,000円程度 | 4,000円程度 |
| 4cm以上 | 13,000〜14,000円程度 | 4,500円程度 |
費用の目安
非露出部(上記以外の部分)
| 切除した脂肪腫の直径の合計 | 3割負担 | 1割負担 |
|---|---|---|
| 3cm未満 | 4,000〜5,000円程度 | 1,500円程度 |
| 3cm〜6cm未満 | 10,000〜11,000円程度 | 3,500円程度 |
| 6cm〜12cm未満 | 12,000〜14,000円程度 | 4,500円程度 |
| 12cm以上 | 25,000円程度 | 8,000円程度 |

実際の金額は、大きさ・部位・手術の内容によって前後します。深い場所にあるものや大きなものでは、手術の規模に応じて費用も変わります。正確な費用は、診察で状態を確認したうえでご案内します。
なぜ脂肪腫はできる?
原因とできやすい人
はっきりした引き金は、まだ分かっていません。
脂肪細胞のもとになる細胞に変化が起き、脂肪が増えていく——大まかにはそうした流れです。その変化がなぜ起きるのかまでは、まだ解明されていません。
できる仕組み
もともと脂肪組織は、胎児のころに毛細血管の周りにある未分化な細胞から作られます。この未分化な細胞に異常が生じ、脂肪細胞が過剰に増えたものが脂肪腫です。発症は40〜60代に目立ち、体格では太めの方に生じやすい傾向があります。
できやすいのはこんな人
年齢でいえば、中高年が中心です。
太めの体格の方に多い傾向はあるものの、やせている方にもできます。体型だけで決まるわけではありません。家族内に複数の脂肪腫が見られる「多発性脂肪腫症」のように、体質や遺伝的な傾向が関わるタイプも知られています。
ストレスや生活習慣は関係する?
ストレスや特定の食べ物が脂肪腫を直接つくる、という科学的な裏づけは今のところありません。
「これを食べれば防げる」といった予防法も確立していません。生活習慣を整えること自体は体全体の健康に役立ちますが、脂肪腫だけを狙って消したり防いだりする方法は、現時点では見つかっていません。
首・背中・脇・顔…
脂肪腫ができやすい部位
体のどこにでも生じますが、できやすい部位にはかたよりがあります。
| 好発部位 | 首・肩甲骨まわり・脇の下・腹壁・太もも。首だけで全体の約1割との報告もある |
|---|---|
| 気づきやすい部位 | 背中・肩は面積が広く脂肪も多い。腕・おしり・みぞおち付近にも生じる |
| 額(前額部) | 皮膚のすぐ下に見えても、前頭筋という薄い筋肉の下に潜んでいることが多い |
| 脇の下・鼠径部 | 見た目の大きさ以上に、深くまで広がっていることがある |
粉瘤(アテローム)との
違い・見分け方
よく取り違えられるのが、粉瘤(アテローム)です。どちらも皮膚の下のしこりですが、正体は別ものです。
粉瘤は、皮膚の袋(囊腫)の中に、角化物という垢や皮脂に近い物質がたまったできものです。中央に黒い点のような開口部が見えることがあり、強く押すと臭いのある内容物が出る場合があります。細菌感染を起こすと、赤く腫れて痛みます。

対する脂肪腫は、袋の中身が脂肪そのもの。開口部も臭いもありません。
ふだんは痛みも出にくく、感染で急に赤く腫れることもまれです。見分ける手がかりは、袋の有無・中身・臭い・開口部の4点になります。
もっと詳しい見分け方は、別のページで扱っています。
悪性化することはある?
脂肪肉腫との見分け方
基本は良性
ほとんどは良性で、そのままがんに変わっていくものではありません。
数ミリ〜数センチのやわらかいしこりで、ゆっくりとしか変化しないものであれば、過度に心配しなくてよい場合が多くあります。
こんなときは注意
とはいえ、脂肪のかたまりに見えても、まれに脂肪肉腫という悪性の腫瘍が隠れていることがあります。次のような変化があるときは、早めの受診をおすすめします。
- 短期間で急に大きくなってきた
- さわると硬く、弾力に乏しい
- 皮膚の浅い層ではなく、深い場所にある
- 大きさが5センチを超えている
- 押したり動かしたりすると痛みがある
これらにあてはまるからといって、必ず悪性というわけではありません。
ただ、見た目や触った感じだけで良性・悪性を確実に区別するのは難しいのが実際のところです。
気になる変化に気づいたら、一度医療機関で確かめてください。

統括医のワンポイント
「がんではないか」とご心配で来られる方もいらっしゃいます。脂肪腫のほとんどは良性ですが、急に大きくなる・硬いといったサインがあるときは、念のため画像で確かめます。心配な変化に気づいたら、そのままにせずご相談ください。
画像検査(超音波・MRI)と病理検査でわかること
しこりの正体を確かめる方法は、おおむね次の3つです。内部にムラのある部分が見つかれば、脂肪肉腫との区別のために追加の検査へ進みます。
| 超音波 | 体への負担が少なく、その場で内部を確認できる。脂肪腫はレンズのような形に映ることがある |
|---|---|
| MRI | より深いところまで調べる。脂肪腫らしい信号か、境目がはっきりしているかを見る |
| 病理検査 | 取り出した組織を顕微鏡で調べ、診断を確定する |
参考:軟部肉腫について(国立がん研究センター 希少がんセンター)
参考:軟部肉腫〈成人〉(国立がん研究センター がん情報サービス)
放置するとどうなる?
自然に消えるのか
自然に消えることは基本ない
いったんできた脂肪腫が自然になくなることは、ほとんどありません。
痛みがないので様子を見ているうちに、少しずつ育っていく。これが一般的なパターンです。
放っておくと
小さいうちは困らなくても、大きくなると見た目が気になったり、服やベルト、椅子の背もたれに当たって邪魔になったりします。神経の近くで育てば、押されて違和感が出ることもあります。頻度は高くないものの、大きくなってから悪性が見つかる例もあるため、サイズが増しているものは一度診てもらってください。良性のうちに小さく取れれば、傷あとも小さくすみます。
自分でつぶす・取るのは危険
粉瘤と同じ感覚で、自分で押しつぶそうとする方がいらっしゃいます。
ですが脂肪腫は、袋を押して中身が出るような構造ではありません。無理に針を刺したり切ったりすると、出血や細菌感染を招き、取り残しから再発する原因にもなります。セルフケアで何とかしようとせず、医療機関にお任せください。
脂肪腫は何科で
診てもらう?
相談先は、皮膚科・形成外科・整形外科のいずれでも構いません。迷ったときの選び方には、いくつか目安があります。
| 科 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 皮膚科 | 皮膚のできもの全般の窓口 | 脂肪腫か粉瘤か、別の病気かをまず診てほしいとき |
| 形成外科 | 切って縫う手術と、傷あとの仕上げが専門 | 顔や首など、傷を目立たせたくない部位 |
| 整形外科 | 筋肉や骨に近い深い腫瘍を扱うことが多い | 大きく、深い脂肪腫 |
当院は形成外科として、傷あとに配慮した日帰り手術に対応しています。
脂肪腫の治療・手術方法
治療は手術で取るのが基本
薬で溶かす、注射で小さくするといった治療法は、脂肪腫では確立していません。自然に消えることもないため、取り除くなら手術で摘出するのが基本になります。小さくて症状がなければ、あわてず経過を見る選択も現実的です。ただし、確実になくすには摘出が必要です。
手術の流れ
一般的な流れは次のとおりです。
- しこりの位置に印をつけます
- エピネフリンを加えた局所麻酔を行います
- 腫瘍より少し小さめに、直線状に皮膚を切開します
- 周囲の組織から鈍的に(はさみや指で、なるべく傷つけずに)はがし、かたまりを取り出します
- 内部と皮膚を縫合します
- 必要に応じて細いドレーン(排液の管)を入れ、血のたまり(血腫)を防ぎます

脇の下や鼠径部のような深い部位、額のように筋肉の下にあるものは、位置に応じて切開や剝離の仕方を調整します。

統括医のワンポイント
「どのくらいの傷になりますか」とよく聞かれます。切開の長さは、しこりの大きさや深さによって変わります。しわの向きに合わせるなど、なるべく目立ちにくく仕上げる工夫をしていますので、仕上がりのご希望も遠慮なくお伝えください。
日帰り手術について
小さめ〜中くらいの脂肪腫で、体の表面近くにあるものは、局所麻酔による日帰り手術で対応できることがほとんどです。手術そのものは数十分程度で終わり、当日はご自身で歩いて帰宅できます。もっとも、非常に大きいもの、深部に及ぶもの、血管や神経に近いものでは、全身麻酔や入院での手術がすすめられる場合があります。どの方法が適しているかは、大きさ・部位・深さを診察と検査で確かめてから判断します。
傷あと・ダウンタイム
切開の長さは、しこりの大きさに応じて変わります。
形成外科では、しわの向きや目立ちにくいラインに沿って切開し、丁寧に縫い合わせることで、傷あとをなるべく目立たせない工夫をします。傷は最初こそ赤みがありますが、数か月かけて少しずつ落ち着いていきます。仕事や家事は翌日から可能な場合が多く、部位や仕事内容に合わせて無理のない範囲を相談しながら決めます。
手術のあとの生活と
仕事復帰の目安
手術のあとは、傷を清潔に保ちながら回復を待ちます。目安は次のとおりですが、回復には個人差があります。
| 抜糸 | おおむね1〜2週間(部位による) |
|---|---|
| ドレーン | 入れた場合、排液が落ち着く数日のうちに抜くことが多い |
| 通院 | 抜糸や経過確認のために数回 |
| 入浴 | 傷の状態に合わせて、シャワーから徐々に再開 |
| 運動 | 傷が引っぱられる動きは、数週間ほど控えめに |
| 仕事復帰 | デスクワークは翌日から可能なことが多い。力仕事は回復を見ながら |
取り除いたあとの空間に血がたまるのを防ぐため、指示に沿って圧迫を続けていただく場合があります。気になる腫れや痛み、出血があれば、早めにご連絡ください。
よくある質問
何センチになったら手術したほうがよいですか?
サイズだけで一律に線を引くわけではありません。小さくても気になる場所にある、だんだん大きくなっている、痛みが出てきた、といった場合は手術を検討します。5センチを超えるものや急に大きくなったものは、悪性との区別のためにも早めの受診をおすすめします。
押すと痛いのですが、脂肪腫でしょうか?
通常の脂肪腫は押しても痛みが出にくいのですが、血管脂肪腫という種類では圧痛を伴うことがあります。炎症を起こした粉瘤など、別のできものでも痛みが出ます。痛みのあるしこりは、自己判断せず一度診察を受けてください。
脂肪腫がいくつもあります。まとめて取れますか?
脂肪腫は複数できることがあり、家族内に多発するタイプも知られています。数や場所によっては、一度の手術でまとめて取れる場合もあれば、分けて計画したほうがよい場合もあります。診察で全体を確認したうえでご提案します。
子どもにもできますか?
数は多くありませんが、お子さんに生じることもあります。大きくなる、位置が気になるといった場合は、年齢や部位に配慮して対応を相談します。
手術しても再発しますか?
袋(被膜)ごときちんと取り切れれば、同じ場所からの再発は少なくなります。取り残しがあると再発の原因になるため、しっかり取り切る摘出を行います。もともと多発しやすい体質の方は、別の場所に新しくできることがあります。
脂肪腫で
お悩みの方は
当院にご相談ください
当院は、粉瘤・脂肪腫など皮膚のできものの日帰り手術に対応する形成外科クリニックです。保険診療で、土日も診療しています。「これは脂肪腫かな」という段階でのご相談も歓迎します。
ご予約
電話受付時間 平日・土日祝 7:00-21:00
診療時間:10:00〜19:00(最終受付 18:30)
休診:水曜