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背中の粉瘤を治すには?手術の方法と費用・術後の過ごし方を医師が解説

粉瘤(アテローム) 山根 亜衣 山根 亜衣
背中の粉瘤を治すには?手術の方法と費用・術後の過ごし方

背中のしこりは、自分ではなかなか見えません。着替えのときに指先が触れて気づいたり、ご家族に「何かできてるよ」と言われたり。そうして初めて、粉瘤(アテローム)という名前を知る方もいます。

顔や首と並んで、背中も粉瘤がよくできる場所です。ここでは背中の粉瘤の特徴と見分け方から、手術の方法、費用の目安、手術のあとの過ごし方までを、外来で聞かれる順に取り上げます。

この記事で分かること

  • 背中に粉瘤ができやすいのか
  • 背中の粉瘤の特徴と、脂肪腫などほかのしこりとの見分け方
  • くりぬき法と切開法の選び方(2cmがひとつの目安)
  • 背中の粉瘤の手術費用(非露出部の料金)
  • 手術のあとのシャワー・抜糸・傷あとの経過
執筆者
山根 亜衣

日本麻酔科学会 麻酔科専門医

山根 亜衣

粉瘤ひふのできもの
広島形成外科しずくクリニック 統括医

広島大学附属高等学校を経て熊本大学医学部を卒業後、呉共済病院で初期研修を修了。広島市立広島市民病院麻酔科で周術期管理・鎮痛に携わる。安心して受けられる日帰り手術体制を目指し、2026年に当院を開院。

背中は粉瘤ができやすい場所

顔・首に次いで多いという報告

部位ごとの数を調べた国内の報告があります。ある病院が1985年1月から2006年5月までに摘出した391例の表皮嚢腫(一般的な粉瘤)を分けてみると、背中は68例。全体の17.4%で、顔面(23.3%)、首(19.4%)に次ぐ3番目の多さでした(山口ほか, 2007)。

粉瘤ができた部位

この3か所だけで、全体の約6割です。

皮膚科の教科書も、粉瘤(類表皮嚢腫)の好発部位として、胸や背中の上のほう(体幹上部)と、腰からおしりにかけてを挙げています。できる場所の多くは、毛の生えたところ(あたらしい皮膚科学 第3版)。

参考:山口敏之ほか「粉瘤症例の検討」日本臨床外科学会雑誌 68(3):547〜551, 2007(J-STAGE)

参考:清水宏『あたらしい皮膚科学 第3版』中山書店, 2018, p.417(類表皮嚢腫)

背中の粉瘤の特徴と見分け方

見えない場所だからこそ、触った感じも手がかりに

見た目は、ほかの場所にできた粉瘤と変わりません。

皮膚がドーム状に盛り上がったしこりで、直径1〜2cmほどのものが多く、ときに10cmを超えることも。真ん中に黒い点のような開口部が見えたり、触ると弾力のある硬さだったりします。表面の皮膚とはくっついている一方、しこりの横や下は、周りの組織に対して動きます(あたらしい皮膚科学 第3版)。

鏡を使っても見づらいのが、背中という場所。ご家族に見てもらうなら、次のところを確かめてもらってください。

  • 盛り上がりの真ん中に、黒い点がないか
  • しこりのまわりの皮膚が、赤くなっていないか
  • 前に見たときより、大きくなっていないか

脂肪腫や、ほかのしこりとの違い

背中にできるしこりは、粉瘤だけではありません。よく比べられるのが脂肪腫です。

形成外科の診療ガイドラインには、皮膚の下のしこりを見分けていく手順が図で示されています。この図では、粉瘤の手がかりは皮膚の開口部(いわゆるヘソ)と、粥状の中身。脂肪腫は、やわらかい弾力があって、皮膚とはくっつかずに動くとされています。

比較項目粉瘤脂肪腫
触った感じ弾力のある硬さやわらかい弾力
表面の皮膚との関係くっついているくっつかずに動く
見た目の手がかり真ん中の黒い点(開口部)─
中身角質脂肪

同じ図には、肩甲骨の下の角のあたりは弾性線維腫というしこりが出やすい場所、とも書かれています(形成外科診療ガイドライン1 2021年版)。背中のしこりといっても、正体はいろいろ。

ごくまれではあるものの、悪性の腫瘍が粉瘤のような見た目をとることもあります。超音波検査は、良性か悪性かを見分ける手がかりとして役立つ可能性があるとされています(同 CQ1)。もっとも、超音波だけで診断を確定するのは難しいもの。最後に確かめるのは、取り出した組織の病理検査です。当院でも、手術で取った組織は原則として検査に回しています。

ニキビとの違いも含めて比べたいときは、粉瘤とニキビ・脂肪腫の見分け早見表をどうぞ。

注意赤く腫れて痛むときは

表皮嚢腫のおよそ半数に、二次的な炎症がみられたという海外の報告もあります(山口ほか, 2007)。

急に赤く腫れてズキズキ痛む、押すと痛い、といった変化は、炎症のサインかもしれません。この状態は炎症性粉瘤と呼ばれ、先に炎症を鎮めてから袋を取ることがあります。自分でつぶさずに、早めの受診を。

山根 亜衣(やまね あい)

統括医のワンポイント

外来では、赤く腫れて痛くなってから、初めて背中の粉瘤に気づいたという方もいらっしゃいます。見えない場所なので、小さいうちに気づきにくいのは無理もありません。痛みや腫れが出てきたら我慢せず、早めにご相談いただければと思います。

背中の粉瘤の手術

くりぬき法と切開法、大きさがひとつの目安

治療の基本は、手術で袋(嚢腫壁)ごと取り除くこと。形成外科の診療ガイドラインも、袋を残さずに取り出すことが根治につながるとしています(CQ5)。

中身だけを出しても、袋が残っていれば同じ場所がまた膨らんできます。取り方は2通り。小さな円形の器具で数ミリの穴をあけて袋を引き出すくりぬき法と、しこりに沿って皮膚を紡錘形に切って取り出す切開法です。

目安ガイドラインが示す目安は2cm

大きさで方法を分ける考え方を、形成外科診療ガイドラインが示しています。直径2cm以下なら、パンチ(くりぬきに使う円形の器具)による小さな切開か、通常の切開法。2cm以上なら、通常の切開法です(同 CQ5・推奨の強さ2C)。

根拠になったのは、60人の患者さんを2つの方法に振り分けて比べた海外の研究1本。国内での検討はこれから、とされています。

とはいえ、2cmで機械的に決めるわけではありません。実際の診察では、大きさに加えて、炎症があるかどうか、袋が周りとくっついていないかも見て、どちらにするかを決めます。

手術の日の流れ

01

診察と説明

医師がしこりの状態を確かめ、手術の方法や合併症、術後の注意点をご説明します。内容にご納得いただいてから、同意書にご署名いただきます。

02

手術

必要に応じて血圧の測定や採血をしてから、局所麻酔で手術をします。手術そのものは、30分程度で終わることが多いです。

03

お会計・帰宅

抜糸や術後の診察の予約をお取りして、その日のうちにご帰宅いただけます。診察からお会計まで、全体で1〜1.5時間ほどが目安です。

当院では、診察したその日のうちに手術まで行う「即日手術」に対応しています。しこりの大きさや部位、状態、その日の混み具合、ご希望によっては、別の日の手術をご案内することも。

山根 亜衣(やまね あい)

統括医のワンポイント

外来では「背中の手術は痛くないですか」とよく聞かれます。局所麻酔をしてから始めるので、手術中の痛みは麻酔で抑えられます。麻酔の注射のときに少しチクッとすることはありますが、できるだけ痛みを和らげるよう気を配っていますので、不安なことは遠慮なくお伝えください。

参考:日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会 編『形成外科診療ガイドライン1 2021年版』CQ1(p.6)・CQ5(p.10〜11)・皮下腫瘍・軟部腫瘍の診断ステップ(p.22)

参考:粉瘤(アテローム・表皮嚢腫)(日本形成外科学会)

背中の粉瘤の手術費用

背中は「非露出部」の料金です

粉瘤の摘出は、保険診療で行う手術です。料金はできた場所と大きさで決まり、半袖のシャツで隠れる背中は「非露出部」として扱われます。

大きさ費用の目安(3割負担)
直径3cm未満3,840円
直径3cm〜6cm未満9,690円
直径6cm〜12cm未満12,480円
直径12cm以上24,960円

初診・再診料と、採血・超音波・病理検査の費用は、手術代とは別。いくらになるかは、診察でしこりの大きさと状態を確かめたうえでお伝えします。

顔や腕など、露出部の料金と並べて見たいときは粉瘤の手術費用(露出部と非露出部)の表を。

手術のあとの過ごし方と傷あと

シャワー・抜糸・テープの目安

手術後の経過

シャワーは当日から使えることが多い

手術の当日から、多くの場合シャワーが使えます。ただし、部位や方法によって違うので、入浴を始める時期とあわせて手術のあとにお伝えするかたちです。

「縫った傷を濡らして、化膿しませんか」。そう心配される方は少なくありません。

早いうちに傷を濡らしても、化膿が増えるわけではない。そうした研究がいくつかあります。形成外科診療ガイドラインも、汚れのない状態で縫い合わせた傷なら、1〜2日後からシャワーで濡らしてよいという立場です(形成外科診療ガイドライン3 2021年版 CQ2・推奨の強さ2B)。

根拠のひとつは、顔以外の小さな皮膚の手術を受けた人を対象にした比較試験。背中の傷は、ちょうどこの「顔以外」にあたります。

抜糸は1〜2週間後が目安

抜糸は、手術からおおむね1〜2週間たったころ。部位によって前後します。取り出した組織は病理検査に回し、良性か悪性かを確かめる流れです。

傷あとの経過

ふつうの傷あとは、いったん厚みを増したあと、1年以内に平らで落ち着いた状態になっていくとされています(同 CQ11)。

注意したいのは、赤く盛り上がってくる傷あと。肥厚性瘢痕と呼ばれ、傷が閉じて数週間たったころから目立ちはじめることがあります(同 CQ11)。盛り上がりは、早く手を打つほど治療の成績がよいとされているので、気になる赤みが出てきたら遠慮なくご相談を。

傷あとを目立たせにくくするために

  • 手術のあと、テープで傷を固定する。傷あとの幅が広がるのを防ぐ効果が確かめられています(同 CQ33・推奨の強さ1A)。ガイドラインが挙げる研究には、胴体(体幹)の傷のテープ固定を調べたものも含まれます
  • 縫うときに、傷にかかる張力を減らす。皮膚の深いところ(真皮)を縫うだけでは、盛り上がりを防ぎきれないとされています(同 CQ18・推奨の強さ2B)

よく動く場所の傷や、取り除いた範囲が大きい傷は、盛り上がったり幅が広がったりしやすい。ガイドラインには、そうも書かれています(同 CQ18)。

縫合を担当するのは、日本形成外科学会の形成外科専門医。傷あとが目立ちにくくなるよう、丁寧に縫っています。それでも、傷あとの出方には個人差があり、部位や体質でも経過は変わってくるもの。

手術の日から抜糸までの過ごし方は、粉瘤の日帰り手術の流れと術後のケアにもまとめてあります。

山根 亜衣(やまね あい)

統括医のワンポイント

外来では「背中なので、自分で傷を見られないのが心配」という声をよく聞きます。ご家族に赤みや腫れがないかを見てもらうのが、いちばん確実です。気になる変化があれば、次の受診日を待たずにご連絡いただければと思います。

参考:日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会 編『形成外科診療ガイドライン3 2021年版』CQ2(p.80〜81)・CQ11(p.149〜150)・CQ18(p.157〜158)・CQ33(p.174)

受診するなら

背中のしこりは形成外科・皮膚科へ

形成外科と皮膚科のどちらでも、粉瘤は診てもらえます。手術の傷あとまで考えるなら、形成外科も選択肢のひとつ。

当院はJR広島駅南口から徒歩5分。土日も含めて10時から19時まで診療していて(最終受付18時30分)、休診は水曜だけです。お電話がしにくいときは、LINEからもご相談いただけます。

背中の粉瘤で
お悩みの方は
当院にご相談ください

当院は、粉瘤・脂肪腫など皮膚のできものの日帰り手術に対応する形成外科クリニックです。保険診療で、土日も診療しています。「これは粉瘤かな」という段階でのご相談も受けつけています。

ご予約

082-263-0606

電話受付時間 平日・土日祝 7:00-21:00

診療時間:10:00〜19:00(最終受付 18:30)
休診:水曜

よくある質問

背中の粉瘤は自然に治りますか?

自然に消えることはありません。皮膚の中の袋が残り続けるためです。時間がたつと少しずつ大きくなったり、細菌が入って赤く腫れたりすることがあります。

背中の粉瘤はどうやって取りますか?

局所麻酔の日帰り手術で、袋ごと取り出します。小さな穴から袋を引き出すくりぬき法と、皮膚を紡錘形に切って取り出す切開法があり、形成外科診療ガイドラインでは直径2cmをひとつの目安として方法を分ける考え方が示されています。

背中の粉瘤が、がん(悪性)ということはありますか?

粉瘤は良性のできものです。ただ、ごくまれに、悪性の腫瘍が粉瘤のような見た目をとることも報告されています。当院では取り出した組織を原則として病理検査に出し、良性か悪性かを確認しています。

背中の粉瘤の手術費用はどのくらいですか?

背中は非露出部の料金になり、3割負担の目安は直径3cm未満で3,840円、3cm〜6cm未満で9,690円、6cm〜12cm未満で12,480円、12cm以上で24,960円です。このほかに初診・再診料や、採血・超音波・病理検査の費用がかかります。

手術のあと、シャワーはいつから使えますか?

多くの場合、手術の当日からシャワーが使えます。部位や方法によって異なるため、入浴を始める時期とあわせて手術のあとにご説明します。