「粉瘤ができやすい人って、いるんですか」。外来でときどき受ける質問です。
粉瘤(アテローム)は、年齢や性別に関係なくできるできもの。それでも、たくさんの例を集めて数えてみると、かたよりは見えてきます。
ここで紹介するのは、国内の病院の集計と皮膚科の教科書から分かる、性別・年齢・できやすい場所の傾向。体質やストレスとの関係も取り上げますが、こちらは根拠のある話と、まだ分からない話とを分けて書きました。
目次
この記事で分かること
- 男性と女性、どちらに粉瘤ができやすいか
- 何歳ごろに多いか(10代から80代までの分布)
- 顔・首・背中など、できやすい場所
- 体質・ストレスとの関係
- できやすい人が気をつけたいこと
男性と女性、どちらに多い?
男性が女性のおよそ2倍という報告
手がかりになるのは、国内のある病院の記録です。1985年1月から2006年5月までに摘出され、病理検査で表皮嚢腫(一般的な粉瘤)と診断された391例を、ひとつの論文がまとめています。
内訳は、男性259例に対して女性132例。
男女比にすると1.96対1で、男性が女性のおよそ2倍という結果でした(山口ほか, 2007)。

男性に多い傾向は、この病院に限った話ではないようです。同じ論文が紹介しているほかの報告でも、男女比は1.36対1から2.53対1のあいだで、いずれも男性のほうが多くなっています。なぜ男性に多いのか、その理由までは、この報告からは分かりません。
女性に多いタイプもある
ひとくちに粉瘤といっても、袋の壁のつくりで種類が分かれます。そのひとつ、頭によくできる外毛根鞘嚢腫は、一般的な粉瘤とは逆に女性に多いタイプです。同じ集計では、このタイプの患者さん10人のうち7人が女性でした(山口ほか, 2007)。
もっとも、数はわずか。粉瘤402件のうち11件です。
何歳ごろに多い?
50代がいちばん多く、10代から80代まで
年齢をみると、同じ391例の平均は46.5歳。いちばん多かったのは50代の77例で、30代の70例がそれに続きます(山口ほか, 2007)。20代・40代・60代は、それぞれ60例前後でした。70代になると33例、10代は15例、80代は8例と少なくなります。いちばん若い方は11歳、いちばん年上の方は83歳です。

平均年齢を男女で比べると、男性46.7歳、女性46.2歳。性別による差はみられなかったと報告されています。これまでの報告でも、20代から60代の、いわゆる働き盛りの世代に多いとされてきました(山口ほか, 2007)。
10代でも80代でもできるので、年齢だけで粉瘤ではないと決めることはできません。
例外足の裏は、若い人に多い
場所によっては、年齢の傾向ががらりと変わります。足の裏にできた粉瘤では平均20.9歳で、ほかの場所(47.2歳)よりはっきり若いという結果でした(山口ほか, 2007)。足の裏の例は8例と少ないので、そこは割り引いて受け取ってください。
足の裏には毛穴がなく、ほかの場所とはでき方が違うとみられています。しくみについては、足の裏にできる粉瘤のでき方で説明しました。
参考:山口敏之ほか「粉瘤症例の検討」日本臨床外科学会雑誌 68(3):547〜551, 2007(J-STAGE)
できやすい場所は?
顔・首・背中で全体の約6割
次は、できる場所。
| 場所 | 件数 | 391例のうちの割合 |
|---|---|---|
| 顔 | 91例 | 23.3% |
| 首 | 76例 | 19.4% |
| 背中 | 68例 | 17.4% |
同じ391例のうち、多かったのは顔・首・背中の3か所でした。この3つで全体の約6割を占め、頭から首までに絞っても約半数(46%)にのぼります(山口ほか, 2007)。
皮膚科の教科書にも、粉瘤(類表皮嚢腫)は頭から首、胸や背中の上のほう、腰からおしりにかけてできやすいと書かれています。その多くは、毛の生えている場所です(あたらしい皮膚科学 第3版)。
なかでも顔は、件数がいちばん多い場所でした。手術の方法や傷あとの考え方は、顔にできた粉瘤の手術と傷あとで取り上げています。
背中は、3番目に多い場所。自分では見えにくい背中ならではの見分け方や、手術と費用の目安は、背中にできた粉瘤の見分け方と手術にまとめています。
どの場所にどんな見た目で出てくるかは、粉瘤の見た目と、できやすい部位にまとめました。

統括医のワンポイント
外来では「首の後ろにあるのを、家族に言われて初めて知った」という方がいらっしゃいます。首や背中は、自分では目に入りにくい場所です。ときどき触って確かめたり、ご家族に見てもらったりして、気になるふくらみがあれば一度診せていただければと思います。
参考:清水宏『あたらしい皮膚科学 第3版』中山書店, 2018, p.417(類表皮嚢腫)
体質やストレスは関係する?
分かっていることと、まだ分かっていないこと
家族にもある、体質かもしれない
「親にも粉瘤があったので、遺伝でしょうか」と心配される方がいます。粉瘤が親から子へ遺伝するかどうかについては、私たちが参考にしている皮膚科の教科書や、形成外科の診療ガイドラインには記載がありません。
一方で、一度粉瘤ができた方が、別の場所にまたつくることはあります。何らかの体質的な要素はありそうだ、というのが私たちの見方です。
ストレスでできる?
ストレスの影響も、よく聞かれる質問のひとつ。ストレスが直接の原因になる、という点の医学的な根拠は、はっきりしていないのが現状です。
不潔や食べ物のせい?
洗い方が足りなかった、食生活が乱れていた、とご自分を責める方もいらっしゃいます。けれども粉瘤は、生活の乱れが原因でできるものではありません。中身は皮膚の内側の袋が作った角質で、外から入り込んだ汚れとは違います。
関連記事:粉瘤ができる原因とは?袋ができるしくみと予防の考え方を形成外科医が解説
できやすい人が気をつけたいこと
防ぐより、早めに気づいて対処する
残念ながら、生活習慣を整えれば粉瘤ができなくなる、というものではありません。そのかわり、見つけてからの動き方で、治療の負担は変わってきます。
次のようなしこりは、粉瘤のことがあります。
- 皮膚の下に、ドーム状に盛り上がったしこりがある
- しこりの真ん中に、黒い点のような開口部が見える
- 少しずつ大きくなってきている
- 同じ場所が、前にも腫れたことがある
とはいえ、見た目が似たできものは多く、当てはまるかどうかだけで粉瘤と決めることはできません。判断は、診察で。
注意赤く腫れる前に
表皮嚢腫(一般的な粉瘤)の約50%には二次的な炎症がみられる、という海外の報告が紹介されています(山口ほか, 2007)。赤く腫れてズキズキ痛む状態は、炎症性粉瘤と呼ばれます。こうなると先に炎症を落ち着かせる必要が出てきて、治療全体が長引きがちです。
気になって押したくなっても、自分で中身を押し出すのはやめてください。中身が出ても袋は皮膚の中に残りますし、そこから細菌が入ることもあります。
手術は、小さいうちに取るほうが簡単。費用も抑えられる傾向があります。大きさごとの料金は、粉瘤の日帰り手術の費用の表に載せています。

統括医のワンポイント
外来では「前にも別のところにできたので、今回もそうかと思って」と来られる方がいらっしゃいます。赤みや痛みが出る前の、落ち着いているうちのほうが、手術の負担は小さく済みやすくなります。新しいしこりに気づいたら、一度診せていただければと思います。
受診するなら
形成外科・皮膚科で診てもらえます
診てもらえる診療科は、形成外科と皮膚科。手術の傷あとに気を配りたいなら、形成外科という選択肢もあります。
当院はJR広島駅南口から徒歩5分。水曜をのぞき、土日も10時から19時まで診療しています(最終受付18時30分)。診察した日にそのまま手術を受けていただける、即日手術にも対応しています。大きさや部位、患部の状態、混雑状況、ご希望によっては、手術を別の日にご案内する場合も。
粉瘤かもしれない
しこりは
当院にご相談ください
当院は、粉瘤・脂肪腫など皮膚のできものの日帰り手術に対応する形成外科クリニックです。保険診療で、土日も診療しています。「これは粉瘤かな」という段階でのご相談も受けつけています。
ご予約
電話受付時間 平日・土日祝 7:00-21:00
診療時間:10:00〜19:00(最終受付 18:30)
休診:水曜
よくある質問
女性にも粉瘤はできますか?
できます。ある病院の集計では、表皮嚢腫(一般的な粉瘤)391例のうち132例が女性でした。男性のほうがおよそ2倍多いものの、女性にも珍しいものではありません。頭にできやすい外毛根鞘嚢腫というタイプは、女性に多いと報告されています。
子どもや10代にも粉瘤はできますか?
10代でもみられます。同じ集計では10代が15例で、いちばん若い方は11歳でした。なお、生まれたときからある頭のしこりは、皮様嚢腫という別のできもののことがあります。
粉瘤は遺伝しますか?
粉瘤が親から子へ遺伝するかどうかについては、私たちが参考にしている皮膚科の教科書や形成外科の診療ガイドラインに記載がありません。一度粉瘤ができた方が別の場所にもつくることはあり、何らかの体質的な要素はありそうだと考えています。
粉瘤ができやすい場所はどこですか?
ある病院の集計では、顔・首・背中の3か所で全体の約6割を占めていました。皮膚科の教科書でも、頭から首、胸や背中の上のほう、腰からおしりにかけてできやすく、多くは毛の生えている場所に生じるとされています。
ストレスで粉瘤はできますか?
ストレスが粉瘤の直接の原因になるという医学的な根拠は、今のところはっきりしていません。生活の乱れが原因でできるものでもないので、ご自分を責める必要はありません。