「どうして、こんなところにしこりができたんでしょう」。外来でよく聞かれる質問です。粉瘤(アテローム)は、皮膚の内側にできた袋に角質がたまっていくできものです。袋ができるまでの道筋は、教科書や論文である程度説明されています。
とはいえ、一人ひとりのきっかけまでは、はっきりしないことも多いのが実際です。このページでは、袋ができるしくみ、きっかけ、粉瘤のタイプを順にまとめました。「不潔にしていたから?」「食べ物のせい?」といった疑問にも、分かっていることと分かっていないことを分けてお答えします。
目次
この記事で分かること
- 粉瘤の袋ができて、中に角質がたまるしくみ
- 袋ができるきっかけ(毛穴の炎症・けが・足の裏のウイルス)
- 頭にできやすいタイプなど、粉瘤の種類による違い
- 不潔・食べ物・ストレスは原因になるのか
- 予防はできるのか、できてしまったらどうするか
粉瘤ができるしくみ
皮膚の一部が内側にもぐり込み、袋になる
皮膚の表面の角質は、本来なら垢としてはがれ落ちていくものです。
粉瘤では、皮膚のいちばん外側(表皮)や、毛穴の出口に近い部分(毛包漏斗部)の上皮が、皮膚の深いところ(真皮)へ入り込みます。入り込んだ上皮が増えて袋の形になり、その内側に角質をため込んでいく。皮膚科の教科書では、粉瘤(類表皮嚢腫)のでき方をこう説明しています(あたらしい皮膚科学 第3版)。
顕微鏡で袋の壁を見ると、表皮とほとんど同じ層の重なりが見えます。袋そのものが角質を作り続けているわけで、中身は外から入り込んだ汚れではありません。行き場のない角質が少しずつたまり、しこりはゆっくり大きくなっていきます。
中身の正体は、角質です。
脂肪がたまっていると思われていることもありますが、そうではありません。押したときに出てくる白っぽい中身のにおいも、袋の中の角質が分解されて出るもの。
参考:清水宏『あたらしい皮膚科学 第3版』中山書店, 2018, p.417〜418(類表皮嚢腫・皮様嚢腫・外毛根鞘嚢腫)
袋ができるきっかけ
毛穴の炎症・小さなけが・足の裏のウイルス
きっかけには、いくつかの道筋があります。ただ、診察の場で伺ってみると、ご本人にはまったく思い当たることがない、というのも珍しくありません。
毛穴の炎症のあとから
できる場所を見ると、多くは毛の生えているところです(あたらしい皮膚科学 第3版)。国内の論文には、こんな考え方が紹介されています。毛穴の出口付近に起きた炎症が治っていく途中で、何らかの異常が起きて袋になる、というものです(山口ほか, 2007)。
ニキビが治ったあと、その跡から粉瘤ができるケースもあります。
けがで、皮膚のかけらが押し込まれて
手のひらや足の裏など一部の場所では、けがをしたときに表皮のかけらが皮膚の中へ押し込まれ、それが袋になると考えられています(あたらしい皮膚科学 第3版)。毛穴のない場所にもできるのは、この道筋があるからです。
足の裏では、ウイルスが関わることも
足の裏には毛穴(毛包)がありません。足の裏の粉瘤は、ほかの場所とはでき方が違い、けがによる上皮の入り込みや、ウイルスの感染が大きな役割を果たしているといわれています(山口ほか, 2007)。教科書が挙げているのは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の57型と60型です。
同じ論文には、ひとつの推測も紹介されていました。ウイルスによるいぼの組織が、外からの圧力で皮膚の中へ入り込み、そのまま袋になるのではないか、というものです。
ある病院で1985年1月から2006年5月までに摘出された粉瘤の集計では、年齢にも違いが出ています。足の裏にできた方の平均年齢は20.9歳で、ほかの場所の47.2歳より統計的にも若いという結果でした(山口ほか, 2007)。足の裏の例は8例と少ないので、その点は差し引いて読む必要があります。


統括医のワンポイント
外来では「ぶつけた覚えも、ニキビができた覚えもないんです」という声をよく聞きます。粉瘤は、きっかけがはっきりしないままできていることも多いできものです。心当たりがなくても不思議ではないので、しこりに気づいたら、原因を探すより先に一度診せていただければと思います。
参考:清水宏『あたらしい皮膚科学 第3版』中山書店, 2018, p.417〜418(類表皮嚢腫・皮様嚢腫・外毛根鞘嚢腫)
参考:山口敏之ほか「粉瘤症例の検討」日本臨床外科学会雑誌 68(3):547〜551, 2007(J-STAGE)
粉瘤にはいくつかのタイプがある
頭にできやすいもの、生まれつきのもの
ひとくちに粉瘤といっても、袋の壁のつくりによっていくつかに分かれます。大部分を占めるのは、ここまでお話ししてきた表皮嚢腫(類表皮嚢腫)です(山口ほか, 2007)。
頭によくできるのが、外毛根鞘嚢腫と呼ばれるタイプです。毛穴の少し奥(毛包峡部)から生じると考えられていて、約90%が頭部にできるとされています(あたらしい皮膚科学 第3版)。見た目は一般的な粉瘤とよく似ています。
数は多くありません。
先ほどの病院の集計(1985年1月〜2006年5月)では、粉瘤402件のうち外毛根鞘嚢腫は11件(約2.7%)でした。一般的な粉瘤と比べると女性に多く、頭にできる割合も高めです(山口ほか, 2007)。

もうひとつ、粉瘤と間違えられやすいできものに皮様嚢腫があります。頭によくでき、生まれたときからあるのが特徴です(あたらしい皮膚科学 第3版)。
| 比較項目 | 表皮嚢腫(一般的な粉瘤) | 外毛根鞘嚢腫 | 皮様嚢腫 |
|---|---|---|---|
| できやすい場所 | 頭・首まわり、胸や背中の上のほう、腰からおしり。多くは毛の生えている場所 | 約90%が頭部 | 頭部 |
| でき方 | 表皮や、毛穴の出口付近の上皮が入り込む | 毛穴の少し奥(毛包峡部)から生じると考えられている | 生まれたときからある |
| 見た目 | 中央に黒い点のような開口部があることが多い | 一般的な粉瘤とよく似ている | 粉瘤と間違えられやすい |
ニキビや脂肪腫との違いは、粉瘤とニキビ・脂肪腫の見分け方で比べています。

統括医のワンポイント
外来では「頭のしこりが、粉瘤なのかどうか分からない」という相談をよく受けます。どのタイプなのかは、見た目だけでは決めきれないことがあります。当院では取り出した組織を原則として病理検査に出し、良性か悪性かも含めて確認しています。気になるしこりがあれば、まずは一度診せていただければと思います。
参考:清水宏『あたらしい皮膚科学 第3版』中山書店, 2018, p.417〜418(類表皮嚢腫・皮様嚢腫・外毛根鞘嚢腫)
参考:山口敏之ほか「粉瘤症例の検討」日本臨床外科学会雑誌 68(3):547〜551, 2007(J-STAGE)
不潔・食べ物・ストレスは原因になる?
外来でよく聞かれる3つの疑問
不潔にしていたから?
「ちゃんと洗っていなかったからでしょうか」と、申し訳なさそうに尋ねられることがあります。先ほどお話ししたように、中身は袋の壁が作った角質で、皮膚の表面の汚れがたまったものではありません。生活の乱れが粉瘤の原因になるわけではないので、自分を責めることはないと私は考えています。
食べ物や食生活は?
特定の食べ物で粉瘤ができる、あるいは防げる、という記載は、私たちが参考にしている教科書やガイドラインには見当たりません。
食生活の変化で粉瘤が増えているのでは、という疑問に触れた論文はあります。ある病院の約20年分の集計では、粉瘤の件数に大きな増減はなかったとのことでした(山口ほか, 2007)。もっとも、食べ物との関係を直接調べた研究ではないので、ここから「食事は関係ない」とまでは言えません。
ストレスや体質は?
ストレスについては、直接の原因だという医学的な根拠は、今のところはっきりしていません。
体質のほうは、少し事情が違います。一度粉瘤ができた方が、別の場所にもまたつくることはあって、何らかの体質的な要素はありそうだとみています。
関連記事:粉瘤ができやすい人とは?性別・年齢・部位の傾向を形成外科医が解説
粉瘤は予防できる?
完全に防ぐのは難しいできもの
正直にお伝えすると、粉瘤を生活習慣で完全に防ぐのは難しいです。
そのかわり、できてしまったときの対処で、その後の経過は変わってきます。
粉瘤かな、と思ったら気をつけたいこと
- 自分で押し出したり、針で刺したりしない(袋が残るので、また膨らむ)
- 赤み・腫れ・痛みが出てきたら、市販薬で様子を見ずに早めに受診する
- 小さいうちのほうが、手術は簡単で費用も抑えられる傾向がある
費用を決めるのは、できた場所としこりの大きさ。金額の目安は、粉瘤の日帰り手術の費用にまとめています。
再発同じ場所にまたできるのは、袋が残っているから
中身だけを押し出しても、袋が皮膚の中に残っていれば、しばらくして同じ場所がまた膨らみます。根本的に治すには、袋を残さずに取り除く手術が必要です(形成外科診療ガイドライン1 2021年版 CQ5)。
一方で、袋を取り切ったあとに、別の場所へ新しい粉瘤ができることはあります。先ほどの体質の話とつながるところです。

統括医のワンポイント
外来では「押したら中身が出たので、治ったと思っていました」という方が少なくありません。中身が出ても、袋は皮膚の中に残っています。しばらくしてまた膨らんできたときは、赤く腫れてしまう前に一度ご相談いただければと思います。
参考:日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会 編『形成外科診療ガイドライン1 2021年版』CQ5(p.10〜11)
しこりに気づいたら
形成外科・皮膚科で診てもらえます
診てもらえるのは、形成外科と皮膚科です。手術と、そのあとの傷あとまで見据えて相談したいときは、形成外科が向いています。
受診から手術までの流れは、粉瘤の手術当日の流れと術後のケアにまとめています。
当院はJR広島駅南口から徒歩5分。水曜をのぞき、土日も10時から19時まで診療しています(最終受付18時30分)。頭にある生まれつきのしこりのように、粉瘤かどうか迷うものも、まずは診察で確かめていきます。
粉瘤のしこりが
気になる方は
当院にご相談ください
当院は、粉瘤・脂肪腫など皮膚のできものの日帰り手術に対応する形成外科クリニックです。保険診療で、土日も診療しています。「これは粉瘤かな」という段階でのご相談も受けつけています。
ご予約
電話受付時間 平日・土日祝 7:00-21:00
診療時間:10:00〜19:00(最終受付 18:30)
休診:水曜
よくある質問
粉瘤は人にうつりますか?
うつりません。粉瘤は人から人へ広がる病気ではなく、皮膚の内側にできた袋に角質がたまったものです。
子どもにも粉瘤はできますか?
できることがあります。ある病院で摘出された粉瘤の集計では、11歳から83歳までの方が含まれていました(山口ほか, 2007)。なお、頭にある生まれつきのしこりは、皮様嚢腫という別のできもののこともあります。見た目だけでは区別がつきにくいので、気になるときはご相談ください。
足の裏のしこりが粉瘤ということはありますか?
あります。足の裏の粉瘤は、けがやウイルス(HPV)が関わってできると考えられていて、ほかの場所より若い方に多いという報告もあります(山口ほか, 2007)。
粉瘤を手術で取ったら、もうできませんか?
同じ場所の再発は、袋が残ってしまった場合に起こります。ただ、袋を取り切ったあとも、別の場所に新しい粉瘤ができることはあります。
食べ物に気をつければ、粉瘤を予防できますか?
特定の食べ物で粉瘤を防げる、という記載は、私たちが参考にしている教科書やガイドラインにはありません。粉瘤は生活習慣で完全に防ぐのが難しいできものです。気になるしこりは、小さいうちにご相談ください。